GX map

CDP認定プロバイダーが届ける
GX専門メディア

解説

環境価値とは何か?~脱炭素社会を支える見えない価値の正体~

公開日:更新日:
環境価値とは何か?~脱炭素社会を支える見えない価値の正体~

車での通勤やエアコンの使用、スマートフォンの充電など、普段の生活や企業の経済活動を通して私たちは日常的にCO2を排出しています。すべての排出量をゼロにするのは、現実的に難しいですよね。そんな中で、脱炭素を推進する際に利用できるのが、排出したCO2を打ち消したことにできる「環境価値」です。

この記事では、環境価値の目的や種類、利用方法について、わかりやすく解説します。

目次

環境価値って一体何?

私たちが日頃から利用している電気は、様々な方法で発電されています。

火力発電など化石燃料によって発電された電気には、電気としての価値しかありません。

しかし、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーによって発電された電気には、電気としての価値に加えて、CO2を排出していないという付加価値が加わります。その価値を「環境価値」というのです。
また、工場などで従来より省エネ性能の高い設備の入れ替えによるCO2削減量や、森林の整備間伐を積極化することで増加するCO2の吸収量など、人為的にCO2を減らすことで「環境価値」を創出することができます。

世界では、主に京都議定書の枠組みをきっかけに国連をはじめEUや民間のNGOなどが環境価値を制度などで「見える化」し市場などでの取引を通じて、持続可能な社会の実現に活用する動きが広がっています。

なぜ環境価値が必要とされているのか

環境価値が必要とされている背景には、地球温暖化対策や脱炭素社会の実現に向けた国内外における要請の高まりがあります。日本では2050年カーボンニュートラルを目指し、企業や自治体に温室効果ガス排出削減が求められるようになり、企業は経営の健全性を示す財務的な指標などの開示情報に加えて、脱炭素を始めとする地球環境の持続可能性に配慮した社会貢献が重要視される社会へと変化しています。

この潮流を背景に、環境価値を市場で取引できる仕組みが整備されたことで、企業は環境価値の売買・創出を通じて脱炭素へ貢献することが可能となり、同時に環境への取り組みを競争力強化へ繋げることができるようになりました。

環境価値とカーボンニュートラル・排出削減の違い

環境価値は、カーボンニュートラルや排出削減と混同されやすい概念ですが、役割や使われ方には明確な違いがあります。ここでは、それぞれの違いを整理し、環境価値の位置づけを明確にします。

環境価値と排出削減の違い

排出削減は、自社の事業活動から発生する温室効果ガスを実際に減らす行為を指します。省エネルギーや設備更新、再生可能エネルギー導入などが代表例です。一方、環境価値は、再エネ発電やCO2削減によって生まれた「価値」を証書やクレジットとして外部から調達する仕組みであり、削減そのものとは区別されます。

環境価値とカーボンニュートラルの関係

カーボンニュートラルは「排出量を実質ゼロにする状態」を指し、その達成手段として排出削減と環境価値の活用を組み合わせるケースが一般的です。つまり、環境価値はカーボンニュートラルを実現するための補完的な手段として位置づけられます。

なぜ環境価値が重要なのか

すべての排出を短期間で削減することは現実的に難しいため、環境価値を活用することで、企業は段階的に脱炭素対応を進めることができます。この柔軟性こそが、環境価値が注目される理由の一つです。

環境価値の活用方法

環境価値を活用するには、どのような方法があるのでしょうか?

証書・クレジットの購入

グリーン電力証書や非化石証書、Jクレジットなどの「再生可能エネルギー」や「CO2排出削減」といった環境価値を証明する証書やクレジットを購入する方法です。
企業や自治体は証書を購入することによって、実際に自社で太陽光発電設備や大規模な省エネ設備を導入しなくても環境価値を取得し、カーボンニュートラルやSDGs目標の達成に貢献できる可能性があります。
例えば電力の場合、契約プランなどを変更することなく再エネの導入を実現できる点や、手続きが比較的簡単であることから、多くの企業にとって実現しやすい点が特徴です。

環境価値がセットになった電力契約プランの選択

電力会社が提供する「CO2フリー電気」や「再エネECOプラン」などの環境価値がセットになった電力プランを契約する方法です。
こうしたプランを選択することで、実質的に再生可能エネルギー由来の電力を利用することができます。
電力会社との契約を行うことで再生可能エネルギーが利用できるため、手続きが簡便な点が特徴です。

自家発電設備の導入

自社施設に太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー設備を設置し、直接環境価値を創出する方法です。
売電する電力に環境価値も付与できるほか、自家消費による電力料金の削減や長期的なコスト安定化などがメリットとしてある一方で、自家消費分の環境価値を売却すると自社は再生可能エネルギーの活用をPRできなくなるので注意が必要です。
また、設備の設置スペースの確保や多大な初期投資が必要となる点などの参入障壁の高さに課題があります。

PPA(電力購入契約)

PPA事業者が自社の敷地内外で発電設備を設置・運用し、顧客企業が発電された電力と環境価値を長期契約で購入する方法です。
オンサイトPPA(敷地内設置)とオフサイトPPA(遠隔設置)があり、初期投資不要で再エネ導入が可能です。
契約期間中は安定した再エネ調達ができ、CO2排出削減目標の達成や電力コストの安定化にもつながります。

日本の主要な環境価値制度

取引可能な環境価値にはどのような種類があるのでしょうか?主要な環境価値制度を詳しく見てみましょう。

Jクレジット制度 

日本で最も広く使われている環境価値制度です。農林水産省、経済産業省、環境省が共同で運営しており、省エネ設備の導入、再生可能エネルギーの利用、森林管理などによるCO₂削減・吸収量を「国」がクレジットとして認証しています。温暖化対策推進法や省エネ法、GXリーグETSなどの国内の公的制度に活用されています。

参考:J-クレジット制度について

グリーン電力証書 

2000年から始まった日本最古の環境価値制度です。現在は一般財団法人日本品質保証機構(JQA)が運営しており、太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーによって創出された環境価値を証書として取引可能にしています。温対法のほか、RE100やSBT、CDPなどの国際的なイニシアティブへの報告にも活用されています。

参考:グリーン電力証書の概要について(一般財団法人日本品質保証機構)

非化石証書

太陽光・風力・水力・バイオマスなどの再生可能エネルギーや原子力発電といった「非化石電源」によって創出された環境価値を証書化した制度です。購入した証書は、非化石電力の使用量の証明や再生可能エネルギー比率の向上(原子力は除く)、温対法や省エネ法などの公的制度への対応に活用できます。非化石証書には「非FIT非化石証書」と「FIT非化石証書」があり、国際的な環境報告にも一部活用されており、。比較的手軽に環境価値を取得できる点が特徴です。

参考:はじめての再エネ活用ガイド(企業向け)(環境省)

世界で使われているボランタリークレジット

環境価値は日本だけでなく、世界中で取引されています。特に「ボランタリークレジット」と呼ばれる国際的な環境価値も注目されています。

VCS(VERIFIED CARBON STANDARD) 

世界最大のボランタリークレジット制度で、Verraという団体が運営しています。森林保全、再生可能エネルギー、省エネなど様々なプロジェクトから生まれるクレジットを認証しており、世界中の企業が利用しています。AppleやMicrosoftなどの大手IT企業も積極的に購入しています。

参考:VCS(Verra) 

Gold Standard

WWF(世界自然保護基金)が設立に関わった高品質なクレジット制度です。気候変動対策と同時に持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を重視するカーボンクレジット認証制度で、クレジットは「VER(Verified Emission Reduction)」として発行されます。

参考:Gold standard 

CAR(Climate Action Reserve) 

北米を中心とした地域で使われているクレジット制度です。プロジェクトの種類は森林、農業、廃棄物管理など幅広く、規制市場・自主市場の双方で利用されています。特に森林管理や農業分野でのCO₂削減プロジェクトに強みを持っています。

参考:Climate Action Reserve

ACR(American Carbon Registry)

1996年設立の世界初の民間カーボンクレジット認証プログラムで、、北米を拠点にグローバルに展開しています。森林、農業、再生可能エネルギー、工業など多様な分野をカバーし、また、厳格な審査基準で知られており、高品質なクレジットを提供しています。

参考:American Carbon Registry

これらの国際クレジットの特徴は?

国際的なボランタリークレジットの面白いところは、世界各地の多様なプロジェクトから生まれることです。

例えば、インドの風力発電プロジェクト、ブラジルの森林保全プロジェクト、ケニアのクリーンクッキング(煙の少ない脱炭素型の調理器具の普及)プロジェクトなど、様々な国の環境保護活動を支援できます。

日本企業は、これらのクレジットを購入することで、国境を越えた環境保護活動に貢献できます。

企業が環境価値を購入するメリット

大規模な設備投資なしで環境対策ができる

環境価値証書を購入することで、自社で再生可能エネルギー設備を導入せずにCO2排出削減やカーボンニュートラルを目指す取り組みが可能です。これにより初期投資や設備管理の負担を軽減し、手軽に環境対策を実施できます。比較的小規模な企業でも低予算で迅速に環境配慮型経営へ転換できるのが大きな利点です。

国際イニシアティブへの対応

再生可能エネルギー由来の環境価値の取得は、RE100やSBT、CDPなどの国際的な環境評価基準への対応を容易にし、ESG投資家など外部からの評価向上に貢献します。これにより企業の持続可能性戦略が強化され、グローバル市場での競争力確保や、海外取引先との関係強化にも役立ちます。

だだし、国際的な基準は定期的に内容が改訂されるため、自社が準拠している基準では、どのような環境価値が活用可能なのか、常に最新の情報および将来の見通しを確認することが大切です。

関連記事:脱炭素時代に必須!RE100やSBTなど主要イニシアティブと日本企業の実例を徹底解説

関連記事:CDPって何?企業の環境への取り組みを評価する、世界的な仕組みを分かりやすく解説

環境価値はどんな企業・シーンで活用されているのか

環境価値は、特定の業界や大企業だけのものではありません。企業規模や業種を問わず、さまざまな場面で活用が進んでいます。ここでは、代表的な活用シーンを整理します。

自社排出をすぐに減らせない企業での活用

製造業や物流業など、短期的な排出削減が難しい企業では、環境価値を活用することで、段階的に脱炭素対応を進めています。中長期の設備投資と並行して使える点が特徴です。

サプライチェーン対応としての活用

取引先から脱炭素対応を求められるケースでは、環境価値の購入が早期対応策として活用されます。特に中小企業にとっては、現実的な選択肢となっています。

ブランド・対外発信を目的とした活用

再エネ100%やカーボンニュートラルの表明など、環境への取り組みを対外的に示すために環境価値を活用する企業も増えています。環境価値は、企業姿勢を分かりやすく伝える手段として機能します。

地域にもユニークな取り組みがある!

そんな「環境価値」。日本の各地域では、独自の面白い取り組みも出てきています。

沖縄県の取り組み

沖縄県では「沖縄県CO2吸収量認証制度」が運営され、植林や樹木の保育によってCO₂を吸収する活動を認証しています。県民や市町村、企業が行う緑化活動について、森林のCO2吸収量を認証することによって県内の緑化活動を促進する独自の活動が進められています。

参考:沖縄県CO2吸収量認証制度(沖縄県)

また、沖縄県うるま市では、TOPPANデジタル株式会社が中心となり、国内初となる「モズクのJブルークレジット®」が誕生しました。プロジェクトの背景やお取り組みについては、GX naviでもインタビューをさせていただきました。

参考:国内初の"モズクブルーカーボン"──TOPPAN デジタル株式会社が挑む Jブルークレジット®創出の軌跡①

鹿児島県の驚きの実績

鹿児島県では「かごしまエコファンド制度」という制度があり、県内の森林保全活動から生まれるクレジットを地元企業が購入しています。森林整備から得られる二酸化炭素吸収量を認証し、その吸収量をクレジットとして県内外の事業者などに販売しています。県の公共工事の入札で環境配慮やCO2削減への取り組みが加点対象になっていることから、毎年多くの建設会社が継続的にクレジットを購入しています。

参考:かごしまエコファンドリンクについて(鹿児島県)

まとめ:環境価値で地球を守る新しい方法

いかがでしたか?環境価値の仕組みを理解していただくことに役立てば幸いです。

環境価値は、CO₂削減活動を経済的に支援し、社会全体の脱炭素化を促進する画期的な仕組みです。

企業は環境価値を購入することで、直接的にはCO₂削減活動に貢献できなくても、間接的に地球環境保護へ貢献し、企業価値向上も図れます。環境価値の仕組みを理解することで、より意識的に環境保護活動に参加し、持続可能な社会の実現に向けて行動することができるでしょう。

ぜひこの機会に、環境価値の活用について検討してみませんか?

企業のGXを加速する
おすすめサービス

CDP ロゴ

デジタルグリッド株式会社は環境報告のグローバルスタンダードである国際NGO CDPの再エネ認定プロバイダーです