GXの現在と未来を俯瞰する

第7次エネルギー基本計画とは?カーボンニュートラル実現への新たな一歩

第7次エネルギー基本計画とは?カーボンニュートラル実現への新たな一歩

みなさんは、毎日使っている電気やガスが、どのように作られているか考えたことはありますか?最近、電気代が上がったり、ニュースで「カーボンニュートラル」や「脱炭素」という言葉をよく聞くようになりました。これらは、私たちの生活やビジネスにどんな影響があるのでしょうか。

2025年2月、日本政府は「第7次エネルギー基本計画」を閣議決定しました。これは、カーボンニュートラルを実現するための新しい道しるべです。この記事では、難しい言葉や仕組みについてわかりやすく解説します。一緒に「エネルギーの未来」について考えてみませんか?

目次

エネルギー基本計画とは?カーボンニュートラルとの関係

まず、「エネルギー基本計画」とは何でしょうか。簡単に言うと、日本のエネルギー政策の「設計図」のようなものです。国が「これから何年後に、どんなエネルギーをどれくらい使うか」「どんな技術を伸ばすか」などを決めています。

この計画は3~4年ごとに見直され、時代の変化や世界の動きに合わせてアップデートされます。特に最近は「カーボンニュートラル」、つまり温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという目標が、計画の中心になっています。

参考:第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました(経産省)

カーボンニュートラルの意味と日本の目標

「カーボンニュートラル」という言葉、最近よく耳にしますよね。これは、「温室効果ガスの排出量と吸収量が差し引きゼロの状態」という意味です。

たとえば、工場や車から出るCO₂(温室効果ガス)をできるだけ減らし、それでも出てしまう分は、森林を増やしたり、CO₂を回収する技術で吸収・除去したりして、最終的に“ゼロ”に近づけるという考え方です。世界中で地球温暖化が問題になっている今、カーボンニュートラルはとても重要なキーワードです。

日本では、2020年に「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」と宣言しました。この大きな目標を達成するために、エネルギーの作り方や使い方を大きく変えていく必要があります。

関連記事:カーボンニュートラルとは?その基礎から取り組み内容まで詳しく紹介・解説します

関連記事:カーボンニュートラルに企業が取り組むには?基礎知識や取り組み方法について解説!

第7次エネルギー基本計画のポイント

S+3Eの原則とは

第7次エネルギー基本計画の土台になっているのが「S+3E」という考え方です。これは、

  • S(Safety:安全性)
  • E(Energy Security:安定供給)
  • E(Economic Efficiency:経済効率性)
  • E(Environment:環境適合性)

という4つの柱を同時にバランス良く実現しよう、というものです。

ただ「安くて安定した電気がほしい」だけではなく、「安全で、環境にもやさしい」ことも大事にしよう、ということです。

S+3Eを表した図

出所:大きく変化する世界で、日本のエネルギーをどうする?「エネルギー基本計画」最新版を読みとく(後編)(経済産業省)

2040年のエネルギー構成

第7次エネルギー基本計画では、2040年に向けて「どんなエネルギーをどれくらい使うか」の目標が示されています。特に大きなポイントは、再生可能エネルギー(太陽光や風力など)を「最大の電源」にすることです。

  • 再生可能エネルギーを4~5割に拡大
  • 原子力発電を2割程度に維持
  • 火力発電の削減
  • エネルギー自給率を3~4割に向上

これにより、カーボンニュートラルに近づくだけでなく、海外のエネルギーに頼りすぎない体制を目指しています。

2040年の日本のエネルギー構成を表す図

2040年度におけるエネルギー需給の見通し

出所:大きく変化する世界で、日本のエネルギーをどうする?「エネルギー基本計画」最新版を読みとく(後編)(経済産業省)

再生可能エネルギーと原子力の役割

再生可能エネルギーは、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然の力を使って発電します。これらはCO₂をほとんど出さないため、カーボンニュートラルにとって重要な存在です。

一方、原子力発電もCO₂を出さない発電方法です。第7次エネルギー基本計画では、安全性を最優先しつつ、原子力を「最大限活用」する方針に転換しました。これは、安定した電気を確保しながら、カーボンニュートラルを目指すための選択です。

GX(グリーントランスフォーメーション)との連携

「GX(グリーントランスフォーメーション)」は、経済と環境の両立を目指す新しい考え方です。単にエネルギーを変えるだけでなく、産業や社会全体を「グリーン」に変えていこう、という動きです。

たとえば、電気自動車の普及や、工場の省エネ化、デジタル技術の活用など、さまざまな分野でカーボンニュートラルへの取り組みが進んでいます。

参考:知っておきたい経済の基礎知識~GXって何?(経済産業省)

第6次エネルギー基本計画との違い

ここで、第6次エネルギー基本計画と第7次エネルギー基本計画の違いについて見てみましょう。どちらもカーボンニュートラルを目指している点は同じですが、内容や目標にはいくつかの大きな違いがあります。

・目標年の違い
第6次計画は2030年を主なターゲットにしていましたが、第7次計画は2040年を新たな節目としています。より長い視点で、カーボンニュートラルに向けた道筋が描かれています。

・再生可能エネルギーの位置づけ
第6次計画でも再生可能エネルギーの拡大が重視されていましたが、第7次計画では「主力電源」として、さらに大きな割合(4~5割)を目指すことが明確になりました。

・原子力発電の方針
第6次計画では「原子力の依存度を可能な限り低減」とされていましたが、第7次計画では「最大限活用」へと方針が転換されました。これは、エネルギーの安定供給とカーボンニュートラルの両立を目指すためです。

・GX(グリーントランスフォーメーション)との連携強化
第7次計画では、GXの推進がより強調され、経済成長とカーボンニュートラルの両立を目指す政策が前面に出ています。

・エネルギー安全保障の強化
世界情勢の変化を受け、燃料調達先の多様化や国内供給力の強化など、エネルギー安全保障の観点がより重視されています。

このように、第7次エネルギー基本計画は、第6次計画よりもさらに踏み込んだカーボンニュートラル社会の実現を目指しているのが特徴です。

具体例で学ぶ!カーボンニュートラルへの挑戦

カーボンニュートラルを実現するために、多くの企業が新しい挑戦を始めています。

自動車メーカーの事例

トヨタ自動車は、自動車業界で先駆的な環境戦略「環境チャレンジ2050」を掲げています。この戦略では、自動車製造工程から廃棄物管理まで徹底したCO₂削減活動を行っています。特に注目されるのは、水素燃料電池車(FCV)の開発です。水素燃料電池車は走行時にCO₂を排出せず、水だけを排出するという特徴があります。また、トヨタは工場で再生可能エネルギーを活用し、省エネルギー設備も導入することで製造プロセス全体で環境負荷軽減を図っています。

出所:環境にやさしいクルマづくり(トヨタ自動車)

半導体メーカーの事例
Intelは、生産工程で使用するエネルギー効率化と再生可能エネルギー利用拡大によって2030年までにネットゼロ達成を計画しています。同社は特に水資源管理にも力を入れており、生産プロセスで使用した水資源の再利用率向上にも成功しています。また、新しい半導体製造技術では従来よりも大幅なエネルギー消費削減が可能となり、高性能かつ環境負荷低減型製品提供へつながっています。

出所:サステナビリティへの取り組み(Intel)

関連記事:カーボンニュートラルに向けた取り組み事例10選!国内・国外企業と自治体の取り組みをご紹介

ビジネスパーソンのための活用ポイント

カーボンニュートラルは、企業にとって「コスト」ではなく「競争力」になる時代です。

・グリーン電力の導入
企業が再生可能エネルギーを使うことで、消費者や取引先からの信頼が高まります。

・省エネ投資と補助金
省エネ設備への投資や、国や自治体の補助金を活用することで、効率よくカーボンニュートラルに近づけます。

・新しいスキルの習得
これからは「GX人材」や「エネルギーマネジメント」のスキルが求められます。たとえば、エネルギーの使い方を分析したり、再エネの導入計画を立てたりする力が大切です。

まとめ:カーボンニュートラル社会へ、今できること

第7次エネルギー基本計画は、「安全・安定・経済・環境」のバランスを重視しながら、カーボンニュートラル社会を目指す新しい道しるべです。

私たち一人ひとりができることもたくさんあります。

  • 家庭での省エネや再エネの導入
  • 企業でのグリーン経営や省エネ活動
  • 日常生活での「エネルギーを大切に使う」意識

これらの積み重ねが、カーボンニュートラル社会の実現につながります。

これからの時代、「エネルギーの未来」は私たち自身がつくるもの。まずは身近なことから、カーボンニュートラルへの一歩を踏み出してみませんか?