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解説

【後編】ゼロから実践まで徹底解説!サプライヤーエンゲージメント大全—カーボンニュートラル経営の突破口

公開日:
【後編】ゼロから実践まで徹底解説!サプライヤーエンゲージメント大全—カーボンニュートラル経営の突破口

前編では、サプライヤーエンゲージメントの基礎から、その必要性やメリット、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減の重要性について解説してきました。

ここからは、いよいよ実践編。「どう進めればいいの?」「何から始めるべき?」という具体的なステップや、企業が実際に行っている取り組み事例にスポットを当てていきます。

サプライヤーとの協力は、一朝一夕にできるものではありません。しかし段階を踏めば、だれでも着実に進められます。後編では、「分析」「優先サプライヤーの選び方」「目標や協力内容の伝え方」「働きかけ方」「成果の確認」といった進め方をわかりやすく紹介し、実際の現場で使える知恵やコツもあわせてお届けします。前編に引き続き、わかりやすく解説していきますので、リラックスして一緒に学んでいきましょう!

目次

いざ実践!と思っても、どこから手をつけてよいか迷う方も多いと思います。まずは、大まかな流れと、実際の進め方を一つずつ見てみましょう。

大まかな流れ

サプライヤーエンゲージメントの進め方を1行でまとめると
「分析→対象選定→目標設定→行動→データ収集・評価」
という流れになります。

まずは、自らのサプライチェーンでどのくらい温室効果ガスが出ているか(=排出量の分析)をしてみましょう。分析が終わったら、減らすべき場所や優先的に話し合うべきサプライヤー(=取引先)を決めます。その後、目標や協力内容を一緒に考え、働きかけを始めます。そして成果を確認しながら、必要に応じてやり方を工夫し直すのです。

各ステップの解説

それでは、5つのステップそれぞれの内容をもう少し具体的に見てみましょう。

ステップ1:排出量の分析

初めのステップです。まずは、サプライチェーンのどこで一番たくさん温室効果ガスが出ているか調べます。お店の電気だけでなく、原材料の仕入れや運送、お客様への販売まで、全部を見渡すことが大切です。どの場所やどんな活動が一番悪影響を与えているかを見つけてみましょう。

まずはscope1,2,3の排出量を把握することから始めます。その次に、scope3のカテゴリごとの排出量を調べましょう。

scope3は細かく15の「カテゴリ」に分けることができます。たとえば原材料の調達、商品やパッケージ、輸送、廃棄、資本財や投資など細かく分類されているのです。

15カテゴリの定義は、下記の表をご参照ください。

画像引用元:環境省「バリューチェーン全体の脱炭素化に向けたエンゲージメント実践ガイド」

ステップ2:優先すべきサプライヤーの選定

ステップ1の分析を行った結果、scope3の比率が少ない場合には、まずはscope1、2から排出量削減を検討してみるのもいいかもしれません。


一方で、scope3の比率が大きく削減を行う必要がある場合、次に行うのは「優先すべきサプライヤーの選定」です。
数多くある全てのお取引先と一気に話し合うのは正直難しいですよね。そこで、排出量や取引量が多いカテゴリ、もしくは重要なサプライヤーから話し合いを始めます。実際の企業の例を見てみましょう。
たとえば、エプソンでは取引額が多い順に一次サプライヤーを選び、調達額の合計が総取引額の約80%を超えるまで上位から対象を決めて優先しています。

引用元:エプソン「CSR調達の取り組み」

また、TOTOでは重要部品・原材料供給サプライヤーや、購入金額が大きい、また環境や社会に強い影響を持つ原材料を扱う会社を「重要サプライヤー」として毎年選定しています。こういった会社から順番に協力をお願いし、実質的な削減目標達成に結びつけています。

引用元:TOTO「サプライヤー様とともに」

このように、仕入額が大きい会社や、環境に強い影響を持つ材料・サービスの取引先を選定します。

ステップ3:削減目標や協力内容の提示・共有

3つめのステップでは、実際にサプライヤーに働きかけます。

「いつまでに、どのくらい減らしたいのか」「どんな協力をお願いしたいか」をわかりやすく伝えます。ときには調達する際の基準(環境配慮基準)を新設したり更新することもありえます。目標は一方的に押しつけるのではなく、サプライヤーと一緒に考えて決めることが大切です。

ここでも事例を見てみましょう。

大和ハウス工業株式会社では主要サプライヤーに対して、温室効果ガスの排出削減目標の“自主的な設定”を要請しています。その際にも、一方的に数値目標を押しつけるのではなく、個別の対話を通して削減目標の設定を支援し、省エネ設備の導入なども一緒に検討しています。こうした「目標を一緒に考える姿勢」が、実効性や継続的な協力につながっているのですね。

引用元:環境省「サプライヤーエンゲージメント事例集」

ステップ4:アクションの実行!

いよいよ実行です。サプライヤーに実際に、排出量削減のためのアクションを実施してもらいましょう。

例えば、大日本印刷(DNP)とZeveroは共同で、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量削減を支援するサービスを展開しています。企業内外のサプライヤーに研修や説明会を実施し、排出量測定や削減計画の立案を支援します。さらに、scope3排出量の多い原材料についてサプライヤーと共同で削減策を検討し、実際に肥料や素材の切り替えなどを実施しています。このような取り組みにより、サプライヤー同士で省エネ活動や、成功事例・課題の情報共有の場も作られています。

引用元:大日本印刷「DNPサプライヤーエンゲージメント支援サービス

また、曙ブレーキ工業では「グリーン調達ガイドライン」を取引先と一緒に運用し、環境負荷の少ない材料や部品を優先的に調達しています。加えて、工場単位で設備改善や水使用量低減など、省エネ活動をサプライヤーと一緒に進めています。こうした“みんなでアイデアを出し合い、助け合う”仕組みが、実は成果につながりやすいのです。

引用元:曙ブレーキ工業「CSR環境活動(調達・生産)

このように、サプライヤー任せにするのではなく、みんなでアイデアを出し合いながら助け合うことが大切です。

ステップ5:進捗確認・成果把握・再アプローチ

最後のステップです。とは言っても、ここまで進んだら終わりというわけではありません。

きちんと進んでいるかどうかを定期的に確かめます。うまくいっているところは続け、大変なところはサポートしたり、やり方を見直したりします。排出量に関するデータを、自社とサプライヤー間で効率的に共有できるように、システムを導入することも効果的です。

たとえば川崎重工業では、サプライヤーごとに温室効果ガス排出量の算定や削減状況を定期的にアンケートで確認し、その進捗をダッシュボードで“見える化”しています。進みが遅いサプライヤーには個別面談や勉強会で支援し、算定方法やデータ収集のコツまで丁寧にフォローしています。

引用元:Zeroboard「Zeroboard with Suppliers導入事例・川崎重工業」

こうして定期的に、状況を踏まえた細やかなサポートを行うことが、サプライヤーエンゲージメントにおいては重要になります。

サプライヤーエンゲージメントの実践でよく直面する注意点・ハードルと、それを乗り越えるための工夫や事例を、易しい言葉でご紹介します。

進めるうえでの注意点・ハードル

サプライヤーエンゲージメントには、難しさもあります。

一方的に目標や削減努力を押し付けると、「うちには無理です…」と反発や消極的な返答が返ってくることも。
また、情報共有や進捗確認が不十分だと、力を入れているつもりでも進みが遅くなったりします。

成功している企業は、まず「小さな目標から始める」「分かりやすい手順書や支援ツールを配る」「相談しやすい場を用意する」など、無理なく続けられる仕組みを工夫しています。

引用元:環境省「サプライヤーエンゲージメント事例集

サプライヤー側の理解度が低いままで進めようとしてしまう

サプライヤーとなる企業は中小企業であることが多く、「そもそも温室効果ガス(CO₂など)は自分に関係あるの?」「排出量ってどうやって測ったらいいの?」「脱炭素にどんなメリットがあるのか?」と戸惑う会社も多いです。リソース(人手・お金・ノウハウ)が足りず、情報開示やデータ収集が難しい場合もあります。

それを解消するために、例えばカルビー株式会社では、国内の原材料サプライヤーと一緒に排出量算定のモデル事業を実施し、研修会を開いたり、算定ツールを無償提供したりしながら“できるところから始める”支援を続けています。難しいところは連絡を密に取り合い、フォローを重ねて一歩ずつ進めています。

引用元:環境省「企業事例集

コミュニケーションが一方的になってしまう

サプライヤーとの関係が「指示→実行」だけだと、積極的な協力は得にくいです。「一緒に目標を考える」「分からないことは何でも話し合う」「できた時には喜びや感謝の気持ちも共有する」という“パートナーシップ志向”が大きなカギです。

Walmartでは「Project Gigaton」を通じて約5,900社ものサプライヤーと定期的に対話し、省エネや再生可能エネルギー導入の事例やメリットを共有、融資条件を優遇するインセンティブなどで協力を促進しています。

引用元:環境省「サプライヤーエンゲージメント事例集

最後に、サプライヤーエンゲージメントの取り組みに向けて「明日からできること」を分かりやすくまとめます。初めて取り組む人でも一歩ずつ始められる内容にしています。

まとめ・明日からできること

サプライヤーエンゲージメントを始めるためのファーストステップ

まず最初は「自社の脱炭素目標やサプライチェーン排出量削減の方針」を社内でしっかり整理しましょう。そして、優先すべきサプライヤー(取引額が多い、環境に強い影響のある材料・サービスの会社など)から順番に、協力の呼びかけを始めます。「いきなり全員」を目指さず、“できるところから”始めることが大切です。

社内外に向けたアクションリスト

  • まずは社内で「どこで、どれだけの温室効果ガスが出ているのか」棚卸しをしてみましょう。
    scope1,2,3のそれぞれで分析を行うことが重要です。
  • scope3排出量が多かった場合、取引先リストを見て、どこから話を始めると効果的か(重要・環境影響が大きい順)を考えます。
  • 排出量削減の方針や行動目標をサプライヤーと一緒に考え、「押し付け」ではなく「相談」や「話し合い」を大切にします。
  • 算定ツールや進捗管理の方法を分かりやすく準備します(例:自分で記入・提出できるシートや研修、質問窓口など)。
  • 成果が見えてきたら他のサプライヤーにも範囲を広げていきましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!多くの企業が最初は小さく始めて、やがてサプライチェーン全体の取り組みに広げていった事例も豊富にあります。明日からできる一歩を、ぜひ始めてみてください。

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