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再生可能エネルギー一覧|脱炭素ビギナーのための種類・特徴・導入事例完全ガイド

再生可能エネルギー一覧|脱炭素ビギナーのための種類・特徴・導入事例完全ガイド

みなさんは、最近の電気代の高騰や、ニュースで頻繁に取り上げられる「脱炭素社会」という言葉に、どのような印象を持っていますか?「環境問題は大切だけど、具体的に自分に何ができるのだろう?」と感じている方も多いのではないでしょうか。

私たちの暮らしやビジネスとエネルギー問題は切っても切り離せません。2024年の夏、記録的な猛暑による電力需給のひっ迫は、私たちが直面しているエネルギーの課題を強く印象付けました。こうした状況を背景に、再生可能エネルギーへの注目が急速に集まっています。再生可能エネルギーは、もはや「環境に優しい選択肢」ではなく「経済的にも合理的な選択肢」として世界中で導入が進んでいます。

本記事では、脱炭素ビギナーの皆さんに向けて、再生可能エネルギーの基本から、実際の導入事例、そしてビジネスや日常生活で活用するための具体的な方法までをわかりやすく解説します。記事を読み終えるころには、「自分や自社で今すぐ始められる脱炭素アクション」がきっと見つかるはずです。

目次

再生可能エネルギーとは?

まず、「再生可能エネルギー」とは何かを押さえておきましょう。再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然界に存在し、繰り返し利用できるエネルギー資源のことを指します。これらは枯渇することがなく、発電時に二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスをほとんど排出しません。

一方、現在のところ主力のエネルギーである石油や石炭、天然ガスといった化石燃料は、地球上の限られた資源であり、燃やすことで大量のCO2を排出します。さらに、化石燃料は国際情勢の影響を受けやすく、価格が大きく変動するリスクも抱えています。

再生可能エネルギーは、こうした化石燃料の課題を解決し、持続可能な社会を実現するための切り札です。2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目指すうえで、再生可能エネルギーの導入は欠かせません。特に企業にとっては、サプライチェーン全体のCO2排出量削減が求められる中、再生可能エネルギーの活用が競争力の源泉となりつつあります。

再生可能エネルギーの主な種類と特徴

太陽光発電

太陽光発電は、屋根や地面に設置したパネルで太陽の光を直接電気に変える仕組みです。太陽電池の内部では「光電効果」という現象が起き、光のエネルギーが電子を動かすことで電流が生まれます。設置場所を選ばず、家庭の屋根から大規模なメガソーラーまで幅広く活用できるのが特徴です。例えば広島県では、駐車場の屋根にソーラーパネルを設置し、電気自動車の充電ステーションを運営する事例があります。メンテナンスが比較的簡単で、都市部でも導入しやすい点がメリットです。ただし、夜間は発電できないため、蓄電池との組み合わせが重要になります。

メリット

  • 発電時にCO2をほとんど排出しない
  • 屋根や遊休地など空間を有効活用できる
  • メンテナンスが比較的簡単

デメリット

  • 天候や季節により発電量が変動する
  • 夜間は発電できない(蓄電池との併用が必要)
  • パネル製造過程で環境負荷が発生する可能性

出典:「完全自立型EVシェアリングステーション」実証事業の開始について~ゼロカーボン・ドライブの実現を目指します~(中国電力)

風力発電

風の力を利用して大きなプロペラを回し、その回転運動を発電機に伝えて電気を生み出します。陸上に設置する「陸上風力」と、海上に建設する「洋上風力」の2種類があります。洋上は風が安定しているため発電効率が高く、千葉県銚子沖などで実用化が進んでいます。風車の形状は環境に配慮し、野鳥の飛行経路を考慮した設計が採用されるケースが増えています。課題としては、風況に依存するため天候による出力変動が大きい点が挙げられますが、近年は気象予測技術の進歩で安定供給が可能になりつつあります。

メリット

  • 発電効率が30-40%と再生可能エネルギーの中で最高水準
  • 洋上では風力が安定し大規模発電が可能
  • 土地の有効活用(農地と併用可能)

デメリット

  • 低周波音や景観への影響が懸念される
  • 台風や雷による設備損傷リスク
  • 野鳥の飛来経路との調整が必要

水力発電

ダムの落差や川の流れを利用し、水車を回転させて発電する方法です。大規模ダムから農業用水路を活用した小水力まで規模が多様で、特に中山間地域で導入が進んでいます。水流がある限り発電可能なため、天候に左右されにくい安定性が特徴です。長野県の自治体では、農業用水路に小型水車を設置し、地域の公共施設に電力を供給する事例があります。治水対策と組み合わせたダムの多目的利用も特徴で、洪水調整と発電を両立させる仕組みが注目されています。

メリット

  • 24時間安定した発電が可能
  • ダムの治水機能と組み合わせた多重活用
  • 発電効率80%以上と極めて高い

デメリット

  • 大規模ダム建設で生態系が破壊されるリスク
  • 渇水時は発電量が減少
  • 既存適地の9割が既開発済み

出典:水力発電のしくみ(長野県)

バイオマス発電

木材チップや食品廃棄物、家畜のふん尿など生物由来の資源を燃焼させ、その熱で蒸気タービンを回す発電方法です。廃棄物の再利用が可能で、地域循環型経済の構築に貢献します。岡山県真庭市では林業の端材を燃料に活用し、地域内でエネルギー自給を実現しています。ただし、原料の収集・運搬時にエネルギーを消費するため、地産地消が成功の鍵になります。最近は、生ごみを発酵させてメタンガスを生成し燃焼させる「バイオガス発電」も普及し始めています。

メリット

  • ゴミの有効利用で廃棄物削減
  • 燃料調達から発電まで地域内完結可能
  • 天候に依存しない安定供給

デメリット

  • 輸送時にCO2が発生(地産地消が必須)
  • 燃料調達コストが変動しやすい
  • 食料と競合する資源(トウモロコシ等)の使用リスク

出典:林業・バイオマス産業課(真庭市)

地熱発電

火山国の日本に適したエネルギーで、地下のマグマ熱で温められた蒸気や熱水を利用します。井戸を掘って蒸気を取り出し、タービンを回転させる仕組みです。天候に影響されず24時間安定した発電が可能で、温泉地との共生モデルが各地で研究されています。環境省の調査によると、温泉施設の稼働に影響を与えずに発電できる「バイナリー発電」技術が実用化段階にあります。初期投資が大きいという課題がありますが、発電所の寿命が長い(30-50年)点がメリットとして挙げられます。

メリット

  • 天候に左右されず24時間発電可能
  • 発電後の熱水を農業用ハウスに再利用可能
  • CO2排出量が極めて少ない(13g-CO2/kWh)

デメリット

  • 開発に10年以上の期間と数百億円の費用
  • 温泉事業者との調整が必要
  • 適地の8割が国立公園内に存在

出典:温泉熱利用事例集(環境省)

その他の再生可能エネルギー

太陽熱(温水器)、地中熱(地中の温度差)、雪氷熱(冬季の蓄雪)、温度差熱(海水と大気の温差)など、多様な自然エネルギーが研究されています。北海道では冬に蓄えた雪を夏の冷房に活用する「雪冷房システム」が商業施設で導入され、電力使用量を削減しています。地中熱ヒートポンプは、地表から5m以深の安定した地温を利用し、空調効率を向上させる技術です。これらの技術は地域の特性に合わせて組み合わせることで、より効果的なエネルギー活用が可能になります。

再エネによってグリーン化を果たした都市のイラスト

日本国内の導入状況と世界との比較

日本の再生可能エネルギー導入は、ここ10年で大きく進みました。2023年度には、発電量全体の約22%が再生可能エネルギーによって賄われ、そのうち太陽光が8.3%、水力が7.9%を占めています。しかし、土地の制約や送電網の容量不足といった課題も多く、例えば北海道では風力発電の出力制限が頻発しています。

一方、世界に目を向けると、ドイツでは発電量の44%が再生可能エネルギーで、陸上風力が主力です。中国は太陽光パネルの生産量で世界の80%を占め、アメリカではテキサス州だけで日本の総発電量に匹敵するほどの再生可能エネルギーが生み出されています。

世界の国々の再エネ導入割合の比較

出典:主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較 2022年度実績(経済産業省)

日本でも、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が導入されたことで普及が進みましたが、近年は入札制度への移行や、地域新電力会社の台頭が新たな動きとなっています。今後は、地域ごとの特性を活かした再生可能エネルギーの導入拡大と、送電網の強化が求められます。

再生可能エネルギーのメリット・デメリット

再生可能エネルギーの最大のメリットは、CO2排出量を大幅に削減できることです。これにより地球温暖化の進行を抑制し、持続可能な社会の実現に貢献します。また、エネルギー自給率の向上や、地域経済の活性化にもつながります。例えば、太陽光発電やバイオマス発電の導入によって、地域に新たな雇用が生まれたり、エネルギーコストの削減が実現したりしています。

一方で、導入コストの高さや、天候に左右される発電量の不安定さ、設置場所の確保といった課題もあります。特に日本のような土地が限られた国では、太陽光パネルや風力発電の設置場所の確保が大きな問題となっています。また、送電網の容量不足や、発電した電気を効率よく使うための蓄電技術の発展も今後の課題です。

これらの課題に対しては、補助金や税制優遇措置の活用、地域ごとのエネルギー計画の策定、蓄電池やスマートグリッド(次世代送電網)といった新技術の導入が有効です。実際に、国や自治体は再生可能エネルギーの導入を後押しするさまざまな支援策を用意しています。

実際の導入事例とエピソード

再生可能エネルギーの導入は、自治体や企業、家庭など、さまざまな場面で進められています。

たとえば、長野県飯田市では、市内の公共施設の屋根に太陽光パネルを設置し、発電した電力を市役所や学校の電力として活用しています。この取り組みは、災害時の非常用電源としても役立ち、地域住民の安心につながっています。

企業の事例としては、ユニクロを展開するファーストリテイリングが、国内外の店舗や物流センターで再生可能エネルギー由来の電力を積極的に導入しており、2030年8月期度までに自社の使用電力を100%再生可能エネルギーに切り替える目標を掲げています。

一方で、失敗事例もあります。ある地方自治体では、太陽光発電設備を設置したものの、送電網の容量不足で発電した電気を十分に活用できず、採算が合わなくなったケースが報告されています。このような事例からは、事前の計画やインフラ整備の重要性が学べます。

出典:太陽光発電でカーボンニュートラルな生活を(飯田市)

出典:エネルギー効率の向上(ファーストリテイリング)

ビジネスパーソンのための実践ガイド

では、ビジネスパーソンとして、どのように再生可能エネルギーの導入を進めればよいのでしょうか。ここでは、会社でできる脱炭素アクションの具体的なステップをご紹介します。

まず、最初に行うべきは自社のCO2排出量(Scope1~3)の現状把握です。これにより、どの部門でどれだけのCO2が排出されているかを「見える化」できます。次に、RE100(再生可能エネルギー100%を目指す国際イニシアチブ)への参加や、自社独自の削減目標を設定しましょう。

実際の導入方法としては、オフィスや工場の屋根に太陽光パネルを設置する、再生可能エネルギー由来の電力を新電力会社から調達する、社用車を電気自動車に切り替えるなどが考えられます。これらの取り組みには、国や自治体の補助金や税制優遇策を活用することで、初期投資の負担を大きく減らすことができます。たとえば、太陽光パネルの設置には最大55万円の補助金が出るケースもあります。

また、社員向けの環境教育プログラムを導入することで、社内全体の意識改革と行動変容を促すことも重要です。

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まとめと今後の展望

ここまで、再生可能エネルギーの基礎知識から、具体的な導入方法、実際の事例までを解説してきました。再生可能エネルギーは、地球環境を守るだけでなく、経済や地域社会の発展にも大きく貢献します。導入には課題もありますが、技術の進歩や支援策の充実により、今後ますます身近な存在になっていくでしょう。

みなさんの会社や家庭でも、まずは電力契約の見直しや、屋根・駐車場の空きスペースの活用、社員教育の実施など、小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。持続可能な未来は、今日の選択から始まります。あなたの行動が、社会全体を変える力になるかもしれません。

「まずは何から始めればいい?」――そんな時こそ、この記事で紹介した具体的なアクションを参考に、できることから一歩踏み出してみてください。再生可能エネルギーの導入は、あなたのビジネスや暮らしに新しい価値をもたらすはずです。