カーボンニュートラルとは?補助金が注目される理由
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量の差を実質ゼロにすることを指します。
カーボンニュートラルが求められる背景として、地球温暖化の進行、それに伴う気候変動が挙げられ、2015年に採択されたパリ協定では、世界共通の長期目標として気温上昇を2℃未満、1.5℃以内に抑える努力をすることが掲げられました。
日本においても2020年10月、「2050年のカーボンニュートラル」が宣言され、実現に向けて国や企業が一体となり動き始めている状況です。
こうした国のカーボンニュートラル政策や企業のCSR(企業の社会的責任)意識向上などによって、カーボンニュートラルに関する補助金や支援策が次々と整備されています。
国のカーボンニュートラル補助金制度
国のカーボンニュートラル補助金制度は、環境省を中心に運営されており、補助金によっては経済産業省・国土交通省などが運営母体としているものもあります。この記事では令和6年度(2024年度)に募集された補助金を紹介します。
1. IT・デジタル化関連補助金
1-1.IT導入補助金
IT導入補助金は、CO2排出量の見える化を始めとした排出量算定ツールやエネルギーマネジメントシステムの導入などの生産性向上に関する取り組みに対する補助金で、管轄は経済産業省です。
補助対象要件 | ・中小企業・小規模事業者等であること |
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対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用最大2年分)、導入関連費 |
補助上限額 | 150万円、450万円 |
公式ホームページ | |
事業実施期間 | 令和3年度~令和7年度(2021年度~2025年度) |
参考:2024年度の募集期間 | 2024年2月16日(金)~2024年10月15日(火)17:00 |
「通常枠」の場合
出所:IT補助金2024
2. 再エネ・脱炭素化推進関連補助金
2-1.民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業
民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業は、太陽光発電などをはじめとする再生エネルギー設備導入を促す事業です。事業内容は以下の7つに大別されています。
1. ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
2. 新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業
3. 再エネ主力化に向けた需要側の運転制御設備等導入促進事業
4. 離島等における再エネ主力化に向けた設備導入等支援事業
5. 平時の省CO2と災害時避難施設を両立する新手法による建物間融通モデル創出事業
6. データセンターのゼロエミッション化・レジリエンス強化促進事業
7. 公共施設の設備制御による地域内再エネ活用モデル構築事業
そのうち、1.ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業について詳細を以下の表にまとめました。ストレージパリティとは、太陽光発電を導入する際、蓄電池も併せて導入した方が経済的メリットのある状態を指します。
例えば「御社の工場の電力使用状況であればストレージパリティが達成できるので、蓄電池も導入しましょう」といった考え方です。
事業内容 | 初期費用ゼロでの自家消費型の太陽光発電設備・蓄電池の導入支援 |
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補助対象 | 業務用施設・産業用施設・集合住宅・戸建住宅への自家消費型の太陽光発電設備・蓄電池の導入支援 |
補助率 | 太陽光発電設備:定額 |
応募詳細 | |
実施期間 | 令和3年度~令和7年度(2021年度~2025年度) |
参考:2024年度の募集期間 | 第1次 2024年3月26日(火)~2024年4月23日(火) |
2-2.工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)
工場・事業場など民間企業に対し脱炭素の取り組みを支援する事業はSHIFT事業とも呼ばれ、工場や事業場における脱炭素化の取り組みを支援しています。
事業内容 | ① CO2削減計画策定支援 |
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補助対象 | ① 中小企業等による工場・事業場でのCO2削減目標・計画の策定 |
補助率 | ① 3/4(補助上限100万円) |
公式ホームページ | |
事業実施期間 | 令和3年度~令和7年度(2021年度~2025年度) |
募集期間 | 1次公募:2024年6月7日(金)~2024年7月16日(火) |
2-3.プラスチック資源・金属資源等のバリューチェーン脱炭素化のための高度化設備導入等促進事業
プラスチック資源・金属資源等のバリューチェーン脱炭素化のための高度化設備導入促進事業は、脱炭素型のリサイクル設備・再生可能資源由来の製造設備などの導入支援を行う事業です。
事業内容 | ① 省CO2型プラスチック資源循環設備への補助 |
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補助対象 | ① リサイクル設備等の導入、再生可能資源由来素材の製造設備の導入 など |
補助率 | 設備導入に必要な経費の1/2、1/3 |
応募詳細 | |
事業実施期間 | 令和5年度~令和9年度(2023年度~2027年度) |
募集期間 | 1次公募:2024年3月19日(火)~2024年4月19日(金) |

3. 交通・運輸部門の脱炭素化関連補助金
3-1.運輸部門の脱炭素化に向けた先進的システム社会実装促進事業
運輸部門の脱炭素化に向けた先進的システム社会実装促進事業は、国土交通省と連携した事業で、脱炭素化輸送モデルの社会実装を目指しています。
事業内容 | ① 先端技術・システム等を活用した商用車の電動化促進事業 |
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補助対象 | ① 車両の電動化に付随して開発された先端技術・システム等のモデル実証(例:車載型太陽光パネル) |
補助率 | 1/2 |
応募詳細 | |
事業実施期間 | 令和6年度~令和10年度(2024年度~2028年度) |
募集期間 | 2024年6月28日(金)~2024年7月29日(月) |
3-2.地域の公共交通✕脱炭素化移行促進事業
グリーンスローモビリティ(時速20km未満で公道を走れる電動車を活用した小さな移動サービス)などの導入を促進し、再生可能エネルギーと合わせ地域の脱炭素化された公共交通を支援する事業です。
事業内容 | ① グリーンスローモビリティの導入調査・促進事業 |
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補助対象 | ① グリーンスローモビリティ導入に係る調査検討、車両などの導入 |
補助率 | ① 1/2(※上限あり) |
応募詳細 | |
事業実施期間 | 令和元年度~令和9年度(2019年度~2027年度) |
募集期間 | ① 2024年6月28日(金)~2024年7月29日(月) |
4. 建築物省エネ化関連補助金
4-1.建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業
業務用施設のZEB化・省CO2化に寄与する高効率な設備導入を支援する事業です。
ZEBとは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら建物で消費する年間の一次エネルギーの収支ゼロを目指した建物のことです。
事業内容 | ① ZEB普及促進に向けた省エネルギー建築物支援事業 |
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補助対象 | ① (1)新築建築物のZEB普及 |
補助率 | ① (1) 2/3~1/4(上限3~5億円)、建築物面積により変動 |
応募詳細 | |
事業実施期間 | 令和6年度~令和10年度(2024年度~2028年度) |
募集期間 | 2024年8月6日(火)~2024年9月18日(水) |
5. 地域脱炭素化推進関連補助金
5-1.地域脱炭素実現に向けた再エネの最大限導入のための計画づくり支援事業
再生エネルギーの最大限の導入と、事業の持続性向上のための地域人材の確保・育成に関する支援を行う事業です。補助対象は民間企業ではなく自治体で、地域の脱炭素を推進するための計画策定作業や再エネ電源の設置に関する調査のための費用が補助されるものです。
事業内容 | ① 地域再エネ導入を計画的・意欲的に進める計画策定支援 |
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補助対象 | ①(1)地域の再エネ目標と脱炭素の取り組みの計画策定 |
補助率 | ① (1)間接補助3/4、2/3(上限800万円) |
応募詳細 | |
事業実施期間 | 令和3年度~令和7年度(2021年度~2025年度) |
募集期間 | 2024年3月25日(月)~2024年4月19日(金) |

自治体のカーボンニュートラル補助金・助成金制度
カーボンニュートラルの取り組みに対して、地自体が設定する補助金や助成金の制度もあります。こちらでは、自治体の補助金の一部を簡単に紹介します。
6-1.【東京都】ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業助成金
ゼロエミッション実現に向けた経営推進支援事業助成金は、公益財団法人東京都中小企業新興公社によって提供される中小企業の脱炭素化を支援する助成金です。
まず専門家によるハンズオン支援のもとロードマップを作成する必要があり、その計画に従った省エネ設備等の導入や脱炭素の取り組みのPRに要する経費の一部が助成されます。
※申請受付は2024年2月28日まで随時募集。2024年度のハンズオン支援の申請は定員に達したため募集は終了。
6-2.【東京都】運輸・物流分野における脱炭素化支援事業
この事業では以下の助成が受けられます。
・荷主に対する運送費の助成
・運送業者に対する認証取得費の助成
荷主である中小企業等が、貨物自動車輸送を行う場合に、グリーン経営認証制度などの認証を受けている場合、上限を100万円として補助対象経費の1/2の助成を、トラック・バスの運送業者がグリーン経営認証制度を新たに受ける場合も上限を50万円として、補助対象経費の1/2の助成を受けられます。
オンライン申請期限は2025年の1月24日(金)17:00です。
6-3.【札幌市】札幌市純水素型燃料電池導入補助制度
札幌市における水素エネルギーの普及促進を目指した、純水素型燃料電池の導入を支援する制度です。
要件を満たす純水素型燃料電池を導入する人に対し、本体価格(税抜き)の1/2以内の額が補助されます。募集期限は2025年の3月21日(金)です。
6-4.【京都府】京都府太陽光発電等導入促進事業補助金
事業者が駐車場などの未利用地や建築物へ太陽光発電設備を導入する費用を支援する補助金です。
この補助金のうち特定建築主等再エネ導入促進事業では、延床面積300㎡以上の事業所等に、条例による再エネ導入義務の基準を超えて太陽光発電設備を導入する民間事業者に対して、補助上限を900万円として、5万円/kWか基準超過分の費用のいずれか低い額が補助されます。募集期限は2025年1月31日(金)です。
カーボンニュートラル補助金の申請手順と注意点
補助金の種類によって細かい部分は異なりますが、カーボンニュートラル補助金の基本的な申請手順は以下になります。
公募情報が公開されるのは例年年度が変わる4月頃のため、その時期から申請に向けて動き始めるのがよいでしょう。
- 事業を探す
- 環境省ホームページ、執行団体のWebページにて公募情報を確認する
- 応募
- 審査(1~1.5ヶ月)
- 採択
- 交付申請
- 交付手続き(1~1.5ヶ月)
- 交付決定
- 事業実施
- 実績報告
- 書類審査
- 補助金交付(1~1.5ヶ月)
申請手順を見ても分かるとおり、補助金の交付は事業の実施後です。最初の実施段階では一旦必要資金の用意が必要になりますので、注意してください。
令和7年度(2024年度)の事業は以下のリンクから確認できます。
まとめ|補助金を活用して初期費用を抑えたカーボンニュートラルの取り組みへ
カーボンニュートラルの実現に向けた民間企業のさまざまな取り組みに対し、国や自治体は多様な種類の補助金を用意しています。
補助対象となる取り組みや補助率は支援事業によって異なりますので、環境省や執行団体のホームページなどでの入念な確認が必要です。
補助金の公募や詳細は例年4月に公開され始めますので、そのタイミングで補助対象の事業になるか、補助率などを改めて確認し、余裕を持って申請や事業の準備を行うことをお勧めします。