本記事は2022/11/23にデジタルグリッド株式会社コラムページにて公開したものです。
【執筆者】 デジタルグリッド株式会社 RE Generator/RE development team Manager 小菅賢太朗
脱炭素化への社会的要請が高まるなか、企業が使用する電力をいかに再生可能エネルギーへと転換するかは、今や経営上の重要課題となっています。
FIT制度からFIP制度への移行が進み、発電事業者には自立的な売電戦略が求められる一方、需要家には「グリーンウォッシュではない、実質的な脱炭素調達」へのニーズが急速に高まっています。そうした文脈で今注目を集めているのが、コーポレートPPA(電力購入契約)です。本連載では、コーポレートPPAの背景・種類・メリット・デメリットを2回にわたり丁寧に解説します。RE100やESG投資への対応を検討されている企業担当者の方から、再エネ事業の新たな売電先を模索されている発電事業者の方まで、ぜひご一読ください。
FIT制度からFIP制度への移行が進み、発電事業者には自立的な売電戦略が、需要家には本質的な脱炭素調達が求められるようになっています。 第1回では、そうした時代背景を整理した上で、コーポレートPPAの2つの手法——フィジカルPPAとバーチャルPPAの概要をご紹介します。
※デジタルグリッド株式会社や執筆者の所属企業の公式方針や立場を示すものではありません。
1.コーポレートPPAが注目される背景 コーポレートPPAの種類について述べる前に、コーポレートPPAが注目される背景について少しご説明いたします。
日本では2011年に発生した東日本大震災以降、再生可能エネルギー(再エネ)の利用を促進させる制度として、再エネ電力の固定価格買取(Feed In Tariff:FIT)制度が2012年から開始され、その普及に大きく貢献してきました。これは、再エネで発電される電力を送配電会社(すなわち国)が固定単価で買い取る制度であり、買い取りの原資は再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)という形で小売電気料金に上乗せされ、国民が負担していました。
制度が開始されてから10年が経ち、国民負担の軽減と発電事業者に自立を促す(新たな売電機会を与え、収益性を拡大する)という考えのもと、2022年度から順次廃止され、後継の変動プレミアム(補助額)付与(Feed In Premium:FIP)制度への移行が開始されています。
発電家の状況としては、FIT制度のもとで発電された電力の需給を自身が管理する事無く、その全量を国に買い取られていたものが、FIP制度または非FITにおいては、発電された電力の需給の管理や、市場または相対による売電先の開拓や売電を、自らしていく必要がある点が注目されます。
一方で需要家の状況として注目すべき点が二つあります。一つ目は、企業が社会課題を解決することが企業の付加価値に繋がるというSDGsや、地球温暖化対策として自社が使用する電力の脱炭素化を図るRE100を推進し、ESG投資の対象となる方が、資金調達がより容易となる点です。二つ目は、脱炭素化の手段として、小売電気事業者から再エネメニューを購入するほか、2021年からはFIT非化石証書市場で自ら環境価値を購入する方法が加わりましたが、「既存の電力購入コストを引き上げたくない」といった事情や、「通常電力に紐付かない証書を充当して再エネ化をうたう(いわゆるグリーンウォッシュ)手法は本質的ではない」といった指摘があり、代替の手段が求められている点です。こうした状況のもと、特定の相手先(小売電気事業者または需要家)に対して固定単価で発電家が売電する手法として、コーポレートPPAが注目されています。2. コーポレートPPAの種類(フィジカルPPAとバーチャルPPA) コーポレートPPAは、需要家への提供価値に応じて大きくフィジカルPPAとバーチャルPPAの2つに大別されます。フィジカルPPAは再エネ発電所で発電された電力と環境価値をセットで需要家に届ける手法で、バーチャルPPAは電力と環境価値を切り離して考え、環境価値のみを需要家に届ける手法です。(下表1ご参照)
(表1)
次回は、フィジカルPPAとバーチャルPPAの特徴にさらに踏み込み、それぞれの手法のメリットとデメリットについてご説明したいと思います。