GXの現在と未来を俯瞰する

カーボンフットプリントとは? いま企業が向き合う“見える化”の第一歩

カーボンフットプリントとは? いま企業が向き合う“見える化”の第一歩

いま、地球を守るために「脱炭素」や「カーボンニュートラル」という言葉がよく聞かれるようになっています。そんな中で注目されているのが「カーボンフットプリント(CFP)」というしくみです。これは、私たちが使っている商品が、作られてから使われて捨てられるまでに、どれだけCO2を出しているかを“見える化”するものです。

この記事では、CFPの基本的な考え方、最新のガイドライン、企業にとっての活用法について、事例を交えながら丁寧に解説します。

目次

カーボンフットプリント(CFP)ってなに?

たとえば、あなたが買った1本のペットボトル飲料。

この飲み物が、畑で材料を育てるところから、工場で加工されて、トラックで運ばれて、お店に並び、あなたが飲んで、最後に容器をゴミ箱に捨てるまで——どれくらいCO2が出ているかを全部足し算した値が、カーボンフットプリント(CFP)です。

カーボンフットプリントを説明した図

CO2とは、温室効果ガスのひとつで、地球温暖化の原因になります。

たとえばこんな表示があるとします: 「このお茶は、原材料の生産から容器の廃棄までで1本あたり0.8kgのCO2が出ています」

これがカーボンフットプリント。 「この商品は地球にどれくらいやさしいか?」を数字で知ることができるのです。

Tシャツ、ノートパソコン、おにぎり、文房具、何にでもCO2の“足あと”はあります。その見えない足あとを“見える化”してくれるのが、CFPなのです。

なぜCFPが大事なの?

今までは、企業全体で出しているCO2の量に注目されてきました。

でも、地球温暖化を止めるには、会社だけでなく、商品1つ1つに注目することも大事だとわかってきたのです。

たとえば、同じようなおにぎりでも、包装が紙かプラスチックかで、出るCO2の量はちがいます。 原料の産地が近いか遠いか、冷蔵する必要があるかどうかでも、CO2の量が変わります。

だから、1つの商品にどれくらいCO2が排出されるか知ることは、とても大事です。

最近は、大きな会社が「この商品にはどれだけCO2が出ているかをちゃんと見せてね」と、商品を作る会社(サプライヤー)にお願いするようになってきました。

これからは、CO2の量が少ない商品を作れる会社が、より多くの人に選ばれる時代になっていくかもしれません。

会社が出すCO2と、CFPのちがいは?

ところで、会社のCO2は「どこで出たか」によって、3つのグループに分けられます。 これはscope1・2・3と呼ばれています。

・scope1:会社が直接出したCO2(工場の機械など)

・scope2:会社が買った電気から間接的に出たCO2

・scope3:商品を作る材料、運ぶとき、使うとき、すてるときに出るCO2

関連記事:scope 1・2・3の違いを分かりやすく解説

一方、CFPはscope1・2・3とちがって、「商品が主役」です。

たとえば、牛乳1本。 牛の餌を作るところから始まり、牛のげっぷから出るガス、搾乳、パック詰め、冷蔵、輸送、飲まれたあとのパックのゴミ処理まで、全部のCO2を足し算して、牛乳1本あたり何kgのCO2が出ているかを計算します。

つまり、scope1・2・3は「企業が出すCO2の全体像」、CFPは「商品が出すCO2の明細表」です。

CFPはどうやって調べるの?

2025年、環境省が「カーボンフットプリント表示ガイドライン」というルールを発表しました(公式ページはこちら)。

それにしたがって、次のような流れでCFPを出します。

  1. 商品の材料を調べる(どこから来てる?どうやって作られてる?)
  2. 作るときのエネルギーを調べる(ガス?電気?工場の燃料は?)
  3. 輸送手段を見る(トラック?船?飛行機?)
  4. 使うときのエネルギーを調べる(電子レンジ?冷蔵庫?)
  5. 捨てた後どうなるかも考える(焼却?リサイクル?)

参考:カーボンフットプリント(CFP)(環境省)

こうしたデータを全部集めて、CO2に換算し、合計します。

たとえば:

このTシャツは、2.3kg CO2e を出しています

去年のモデルよりも20%へらしました

計算に使った範囲は、材料の栽培〜廃棄まで全部

見せるだけじゃ足りない。減らす工夫が大切!

「数字で見せるだけじゃ意味ないよね?」 そう思ったあなた、正解です。

大切なのは、出てしまったCO2をなるべく減らす工夫をすることです。

たとえば:

工場を太陽光で動かす

トラックを電気自動車にする

パッケージを再生紙にする

長持ちするように商品をデザインする

これらは全部、「カーボンフットプリントを下げる工夫」です。

たとえばAllbirds(オールバーズ)というアメリカの靴メーカーの会社では、くつ1足ごとにCO2の量を表示し、「前よりこれだけ減らしました!」と伝えています。

日本でも、デカボスコアというしくみがあり、商品が「どれだけCO2をへらしているか」をスコアで見せています。

ただのマークじゃなくて、努力のしるしが見えるようになってきているのです。

まとめ: CFPは、地球にやさしい“選び方”を助けてくれる

今は、商品を買うときの選び方が変わりつつあります。

「安いから買う」だけじゃなく、 「環境にやさしいから選ぶ」という考え方が広がってきています。

CFPは、その“ものさし”のひとつです。

これからは、「この商品はCO2が少ないんだ」「この会社はちゃんと努力してるんだ」と気づいて選べるようになることが、とても大切になります。

地球の未来のために、まずは“知ること”から始めてみましょう。

カーボンフットプリントは、わたしたち1人ひとりが地球にやさしくなれる、すごく身近な“きっかけ”なんです。